山田錦が育つ土地の地酒
加東市は兵庫県の北播磨に位置する内陸の町だ。瀬戸内海式気候の温暖さと、海から30km離れた内陸部の冷涼さが重なる。晩秋から冬にかけて霧が立ち込める。こうした気象条件が、日本酒の最高級酒米・山田錦を育てる。
2013年、加東市は「日本酒による乾杯を推進する条例」を制定した。単なる観光キャッチコピーではなく、この町の産業と文化の中心に酒造りを据えた宣言だ。兵庫県立農林水産技術総合センターの酒米試験地は全国唯一。山田錦の研究と改良が、ここで60年以上続いている。
私が推す一品は、忠臣蔵 純米吟醸だ。加東市特A地区産の山田錦を使い、地元の蔵元・奥藤商事が仕込んだ酒である。特A地区とは、兵庫県が認定する最高等級の山田錦産地。その米を、その土地の水と技で醸す。返礼品として届いた時点で、すでに加東市の風土が瓶に詰まっている。

晩酌の盃に注ぐと、米の甘さと吟醸香が立ち上る。純米吟醸は、米と麹と水だけで作られた酒。余計な添加物がない分、山田錦という米の個性と、蔵の仕事が直に伝わる。冷やして飲むも良し、ぬる燗にして飲むも良し。季節ごとに表情を変える酒だ。
米の力を引き出す、もう一つの選択肢
同じく加東市の蔵から、龍力 純米大吟醸 米のささやきも届く。本田商店の手による酒で、こちらも加東市特A地区産山田錦が主役だ。純米大吟醸は、米を50%以上削って仕込む。削られた米の芯だけを使うことで、より繊細な香りと味わいが生まれる。辛口という表現は、後味の切れ味を指す。食事の邪魔をせず、むしろ料理を引き立てる酒として、毎晩の食卓に置きたい一本だ。

米そのものの甘さ、別の形で
加東市の返礼品には、酒だけでなく米そのものもある。日本酒に合うヒノヒカリ 玄米30kgは、令和7年産の新米だ。玄米のまま、あるいは精米歩合を選んで白米にして届く。山田錦は酒米だが、このヒノヒカリは食べる米。加東市の土地で育った米を、毎日の食卓に迎える選択肢である。
たきのいずみ あまざけは、甘酒だ。酒粕を使わず、米麹だけで甘さを引き出した飲料。冬は温かく、夏は冷やして。米の甘さを、別の形で家の中に迎える。
加東市の返礼品を選ぶ意味
加東市に寄付すると、山田錦という米が育つ土地の仕事が、家に届く。それは地酒であり、食べる米であり、甘酒であり、時には家具のような日用品であるかもしれない。だが、この町の顔は何か。それは、60年以上続く酒米の研究であり、その米を育てる農家の手であり、それを仕込む蔵元の技だ。
晩酌の時間に、加東市の地酒を傾ける。その時、あなたの盃の中には、北播磨の霧と、山田錦という米と、蔵の人たちの年月が詰まっている。