播磨平野の中央で、農と畜産が共存する町
加西市は兵庫県の南部、播磨平野のほぼ中央に位置する。北は中国山地の山裾、南は低い山々に囲まれ、市域を流れる万願寺川や普光寺川といった加古川の支流が、田園と畑作地帯を潤している。瀬戸内式気候で冬の降水量が少なく、年間1300㎜前後という乾いた風土だからこそ、古くから多数のため池が造成され、水を大切にする農業が根付いてきた。
この町の基幹産業は農業。山田錦という酒米、加西ゴールデンベリーというブドウ、ハリマ王というニンニク——地名を冠した特産物が並ぶ。同時に、市の南東端には乳牛育成牧場があり、畜産もまた町の生業の一部だ。農地と牧場が隣り合う風景は、この町が食べ物を育てることに真摯な場所であることを物語っている。
神戸牛のすじ肉——部位を知ることから始まる食卓
神戸牛のすじ肉が、なぜこの町の返礼品として届くのか。加西市は姫路市の東隣に位置し、播磨圏域の一部として、姫路が誇るブランド牛の流通圏に組み込まれている。しかし重要なのは、ここで選ばれているのが「すじ肉」という部位だということだ。

すじ肉は、牛の脚や腱の周りの肉。市場では安価だが、長時間の加熱で初めて真価を発揮する。冬の夜、圧力鍋で2時間。あるいは土鍋でとろ火で半日。すじ肉から溶け出したコラーゲンが、スープを白濁させ、口に入れた時にほろりと崩れる食感になる。A4、A5ランクの神戸牛のすじ肉は、その過程で深い旨味を放つ。
600g、1.2kg、1.5kgと選べるのは、家族の人数や調理の頻度を想定した配慮だ。届いた肉を冷凍庫に寝かせておき、秋口から冬にかけて、大根や人参、昆布と一緒に煮込む。あるいは、味噌仕立てで。その時々の台所の都合に合わせて、部位を知ることから始まる食べ方がある。
米と酒、そして野菜——播磨平野の食卓の基本形
きぬむすめの白米は、この町で育つ米。播磨平野の水と土が育てた粒は、毎日の飯として、すじ肉の煮込みの脇役として、家の食卓に着地する。2kg単位で選べるのは、保存と消費のバランスを家庭に委ねる設計だ。

常きげん友禅大吟醸は、鹿野酒造の酒。加西市は山田錦という酒米の産地であり、その米を使った酒が、この町で醸される。晩酌の時間に、すじ肉の煮込みの香りを嗅ぎながら、一杯。季節が移ろう中で、同じ町から届いた米と酒と肉が、食卓の上で出会う。
シャインマスカットのぶどうは、加西ゴールデンベリーの一種。秋の朝採れの粒は、冷蔵庫で冷やして、食後のデザートになる。あるいは、皮ごと食べられる種なしの粒を、子どもの手に握らせる。播磨平野の日差しを受けた甘さが、その時間を満たす。
編集後記
加西市は、農業と畜産が共存する町だ。返礼品を見ると、米、酒、野菜、そして肉——食卓に必要なものが、すべてこの町から出ていることに気づく。高額な工芸品や家電も返礼品にはあるが、この町を知るなら、食べ物から始めるべきだと思う。すじ肉を選んだのは、それが「部位を知る」という食べ方の入口だからだ。家の台所で、時間をかけて肉を柔らかくする過程は、この町の風土を、最も身近に感じさせてくれる。
