和泉山脈の水が、牛を育てる
阪南市の台所を想像するとき、私は和泉山脈から流れ出る水のことを考える。この町は大阪府の南西部、和歌山に近い位置にあり、山脈からの清冽な水が土壌を豊かにしてきた。江戸時代から綿花栽培が盛んだったのも、玉ねぎが「日本の栽培発祥の地」と呼ばれるのも、すべてこの水の恵みだ。
そして今、その同じ水が黒毛和牛を育てている。なにわ黒牛は、この町を代表する畜産品だ。2019年のG20大阪サミットの晩餐会で各国首脳に供された実績が、この牛の質を物語っている。寄付すると届くのは「お楽しみ福袋」という名の詰め合わせ。1kg前後の量感は、家族で何度か食卓に上げるのに丁度よい。焼肉にするのか、すき焼きにするのか、部位の組み合わせが毎回異なるから、その都度、この町の畜産の手仕事を味わい直すことになる。

江戸の蔵が今も醸す、地酒の奥行き
阪南市には享保元年(1716年)創業の浪花酒造がある。300年以上前から、この町で酒を醸してきた蔵だ。年間製造数は約1500石。大きくはない規模だからこそ、一本一本の仕事が見える。
浪花正宗の純米吟醸は、全国新酒品評会で金賞を受けた酒。冷やして飲むと、米の甘みと吟醸香のバランスが心地よい。晩酌の相棒として、あるいは食事の後の一杯として、この町の水で仕込まれた酒が家に届く。ラベルを見るたびに、江戸の時代から続く蔵の営みが、今もこの町で続いていることを思う。

漁港の朝が、食卓に
阪南市には3つの漁港がある。尾崎漁港、西鳥取漁港、下荘漁港。泉州湾は和泉山脈の養分を取り込んだ川の水が流れ込む豊かな漁場だ。釜揚げしらすは、その朝の漁を冷凍で届ける。80g×6個という小分けは、食べたい時に食べたい量だけ解凍できる配慮だ。丼にしても、酢の物にしても、この町の近海で獲れた小魚の塩辛さと甘みが、ご飯を進ませる。
漁港の環境改善にも力を入れるこの町の漁業者たちの手が、毎朝、この食材を獲っている。その現実が、冷凍パックの中に詰まっている。
