熊野灘の朝、塩漬けになるまで
三重県の最南端、熊野川を隔てて和歌山と向き合う紀宝町。この町の台所に届く返礼品を選ぶなら、やはり海だ。
季節の干物セットは、熊野灘で獲れた魚を塩漬けにしたもの。「季節によって内容が異なります」という一文が、この町の食べ方の本質を言い当てている。春は何が、夏は何が、秋冬は何が、この海から上がるのか。その時々の顔ぶれが箱に詰まって届く。

干物は、漁師の知恵であり、保存食であり、同時に調理の手間を最小にする工夫だ。朝、焼き網に乗せて火にかける。皮がぱりりと音を立てる。白い身が透き通る。ご飯の上に乗せて、塩辛さを噛みしめる。あるいは酒の肴に、そのまま。冷蔵庫に常備しておけば、夜遅く帰った日の晩酌も、朝の弁当も、迷わずに決まる。
山と川と海が近い町の、もう一つの顔
この町には、もう一つの食べ方がある。紀和牛の赤身は、すき焼き鍋に。冬の夜、家族で囲む食卓。肉の甘さが、醤油と砂糖の中で静かに開く。海の町だからこそ、山の恵みも大切にする。そういう暮らしが、この町にはある。

みかんも、この地域の冬の日常だ。極早生温州は、秋口から冬へ向かう季節の移ろいを、甘さで教えてくれる。箱で届いたら、毎日一つ、皮を剥いて食べる。子どもの手も、大人の手も、その繰り返しで冬を過ごす。
地酒で、この町を知る
飛雪のクラフトジンは、この町の新しい試みだ。地名そのものが返礼品になる時、その土地は自分たちの風土を言葉にし始めている。晩酌の時間に、この町の水と植物の香りを、グラスに注ぐ。遠く離れた台所で、熊野の夜を想う。
紀宝町への寄付は、季節ごとに変わる食卓の顔ぶれを、一年かけて知ることになる。干物が届き、肉が届き、みかんが届き、酒が届く。その繰り返しの中で、この町の暮らしが、自分の暮らしに重なっていく。
