伊勢街道の中ほど、平坦で肥沃な土地
明和町は松阪市と伊勢市の間に静かに位置している。伊勢湾に面し、町域はおおむね平坦。約2200ヘクタールの農地のうち、550ヘクタールが国営宮川用水から受水している。つまり、この町は水に恵まれた土地だ。
古代から平安時代にかけて、ここは斎宮(さいぐう)の地だった。天皇の名代として伊勢神宮に奉仕した斎王が住んだ場所。その歴史は今も町の骨格に刻まれている。だが私が注目するのは、その歴史よりも、この土地が育ててきた「食べ物」だ。
肥沃な土地、豊かな水、そして伊勢湾からの潮風。こうした条件が揃った場所では、米も野菜も、そして牛も、質の高い飼料を得られる。明和町の農業は米、ダイコン、イチゴ、トマト、メロン、スイカ、キュウリ、アスパラ菜と多品目だが、その根底にあるのは「肥沃さ」という一点だ。
牛すじ、煮込みの時間が家に着地する
松阪牛は、この地域を代表する和牛ブランドだ。明和町はその産地の一角を占める。松阪牛の牛すじは、寄付すると家に届く返礼品の中でも、最も「時間」を必要とする品だ。

牛すじは、届いた時点では硬い。だが、それが調理の入口になる。冷凍のまま鍋に入れ、塩を一つまみ、水を注ぐ。弱火で2時間、3時間と煮込む。その間、台所に肉の香りが満ちる。途中でアクを取り、野菜を足し、味噌か醤油で味を整える。
冬の晩酌に、この煮込みを温め直す。箸で切れるほど柔らかくなった牛すじは、スープの中で輝く。肥沃な土地で育った牛の、その部位だからこそ出る、深い旨味。一杯のスープが、この町の土と水と時間を物語る。
牛すじは、家の食卓に「待つ時間」をもたらす。それは、ふるさと納税の返礼品の中でも稀な価値だ。
米と、海の幸も、この町の顔
三重県産のコシヒカリも、この町の返礼品の中心だ。選べる容量が複数あるのは、家族の人数や食べるペースに合わせるため。2キロから20キロまで、自分たちの食べ方に合わせて選べる。毎日の飯を支える米だからこそ、こうした配慮が生きる。

伊勢湾に面した明和町は、漁業も営まれている。黒海苔、ヒジキ、小女子、バカ貝、アサリ。あなごのみりん干しは、その海の幸を甘辛く仕上げた珍味だ。白いご飯の上に一本、あるいは酒の肴に。小ぶりながら、塩辛さと甘さが交わる味わいは、この町が伊勢湾に面していることを思い出させる。
編集後記
明和町を訪ねたことはないが、この町の返礼品を見ていると、地形と産業の関係が透けて見える。平坦で肥沃な土地が米と野菜を育て、その飼料が松阪牛を育て、伊勢湾が海の幸をもたらす。牛すじという「煮込みの時間」を家に届けることで、この町は、単なる食材ではなく、食べ方そのものを提案している。それが、この町の返礼品の本質だと思う。
