冬が深い村だから、肉がある
白川村は日本有数の豪雪地帯だ。年平均降雪量は972センチ。冬、庄川沿いの集落は雪に埋もれる。そういう土地では、保存食としての肉が、台所の主役になる。
合掌造りの家々が立ち並ぶ白川郷は、いまや世界遺産の観光地だが、その経済を支えているのは観光関連収入だけではない。この村の農業・畜産は、厳しい気候と地形のなかで、何百年も続いてきた営みだ。飛騨地域全体で育てられる飛騨牛は、その歴史の延長線上にある。
白川村から高山市の中心部までは83キロ。富山市までは75キロ。地理的には富山・石川に近く、岐阜県庁所在地の岐阜市までは120キロもある。つまり、この村の食べ方は、飛騨というより、北陸の冬の食卓に近い。雪が深い季節、肉を炭火で焼く、すき焼きにする、煮込む——そういう食べ方が、自然と身についている土地なのだ。
焼肉用の上カルビ、冬の晩酌に
飛騨牛の焼肉用上カルビは、300グラム。家族で囲む鉄板か、小ぶりなホットプレートで十分な量だ。霜降りの入った肉は、火を通すと脂が溶け出し、塩だけで食べるのが正解。白菜や長ねぎを敷いた上に肉を置き、焼きながら食べる。冬の夜、こういう食べ方が、この村の台所では当たり前だったのだろう。

届いた肉は冷凍。解凍は前夜から冷蔵室で。焼く直前に塩をふる。肉の温度が上がりすぎないうちに、さっと火を通す。そういう手仕事の細かさが、肉の味を決める。
米と酒、雪の中で熟成する
白川郷の米は、庄川沿いのわずかな平坦地で作られる。白川郷産のコシヒカリは、冬の間、雪に覆われた土地の恵みだ。雪解け水が流れ込む田んぼで育った米は、粒が揃い、炊いたときの香りが違う。

酒も同じ。白川郷限定の純米大吟醸は、この村の水と米から生まれた地酒。冬の深さが、酒の味わいを作る。晩酌のときに、焼いた飛騨牛の脂を流すのに、こういう酒が欲しくなる。
古代米も、この土地の記憶
白川郷の古代米、黒米も返礼品にある。150グラムか300グラムを選べる。黒米は、白米に混ぜて炊く。冬の朝、黒紫色に染まったご飯を食べると、この村がどれだけ古い農業の営みを守ってきたか、体で感じる。
白川村は、平成の大合併の時代に、単独村制を選んだ。人口1500人足らずの村が、高山市への編入を拒み、自分たちの暮らしを守ることにした。その決断の背景には、観光だけでなく、こうした食べ物——米、肉、酒、古い品種の穀物——を作り続けることへの、静かな執着があるのだと思う。
冬が長い村だからこそ、季節の食べ物を大事にする。そういう台所の論理が、この返礼品たちには詰まっている。
