盆地に根ざした産業の重ね合わせ
可児市は、低山地に囲まれた盆地の中にある。木曽川の南岸、岐阜市と名古屋市の中間に位置するこの町は、古くから農業を中心に営まれてきた。7世紀には須恵器の製法が伝わり、やがて美濃焼へと発展した。志野焼もこの地で生まれた。土地の粘土が良質だったからこそ、窯業が根付いた。
しかし可児市の産業は、歴史の中で何度も姿を変えてきた。戦後、工業化の波が押し寄せ、東海地方最大級の工業団地が整備された。今、この町を支えるのは、高度な製造業だ。世界水準の技術を持つ中小企業が集結している。同時に、農業も続いている。地産地消を推進する「可児そだち」というブランドで、市内の生産物が販売されている。
盆地という地形が、この町の産業を形作ってきた。周囲を丘陵地に囲まれ、風が穏やかで、夏は暑く冬は比較的温暖。そうした気候の中で、農業も工業も、それぞれの形で営まれている。
食卓と暮らしに届く、二つの顔
飛騨牛の切り落としは、この町の農業的側面を代表する品だ。可児市は名古屋圏のベッドタウンでもあり、周辺地域の良質な畜産物が流通する場所でもある。すき焼きの鍋に落とし、火を通す。脂が溶け、香りが立つ。晩酌の時間に、家族で囲む食卓。そうした日常の中に、この町の農業が着地する。

一方、トイレットペーパーは、工業団地が生んだ返礼品だ。日用品として毎日使うものが、可児市から届く。これは観光的な華やかさとは無縁だが、生活を支える実質的な品だ。工業団地で製造される製品の多くは、こうした形で全国に流通している。可児市の産業力は、派手ではなく、堅実だ。

盆地に根ざした農業と、工業団地が支える製造業。二つの産業が共存する町だからこそ、返礼品もまた、食卓と暮らしの両方に届く。飛騨牛のサーロインステーキも、同じく農業的な豊かさを表現している。焼き網の上で、肉が音を立てる。その香りと味わいは、この地域の畜産の質を物語っている。
可児市は、知名度が低く、観光地でもない。しかし財政健全度が日本最高水準にあると評価されている。それは、地場産業が堅実に営まれ、地域経済が安定しているからだ。返礼品を通じて届くのは、そうした町の実像である。
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