矢作川が灌漑する、三河と信州の境界村
根羽村は長野県の最南西部、茶臼山の南東に位置する人口839人の村だ。私がこの村を見るとき、最初に思うのは「水の村」ということだ。村全域が矢作川流域に属し、その水は三河湾へ注ぐ。古くから愛知県西三河地方の灌漑を支える明治用水の涵養林がここにある。つまり、この村の山と水は、隣接する豊田市や西三河の農業を支える根っこの役割を果たしてきた。
16世紀までは三河国に属していた歴史も、村の気質に刻まれている。国道153号で豊田市と通じ、方言も三河弁の影響を受けている。山深いながら、愛知県との結びつきが強い。そうした地理的・歴史的な背景が、この村の産業と食べ物の選択肢を形作っている。
山の牧草地で育つ、こだわり和牛
根羽村の返礼品の中心は和牛だ。根羽こだわり和牛のモモブロックは、300グラムのかたまり肉で届く。ローストビーフに仕立てるのが定番だが、私は届いた時点で、まずその肉の色と香りを確認する習慣がある。

山村で育つ牛は、季節の移ろいを体に受ける。春から秋にかけて、高原の牧草を食む時間が長い。そうした飼育環境が、赤身の質感と風味に反映される。モモブロックは脂が少ない部位だからこそ、肉そのものの味わいが前に出る。低温でゆっくり加熱してローストビーフにすれば、中心がほのかにピンク色に残り、切った時の香りが台所に満ちる。
冷凍で届くので、解凍は前夜から冷蔵庫で。朝、肉を室温に戻してから焼き始めるまでの時間が、調理の質を左右する。この手間を惜しまない食べ手のための返礼品だと感じる。
同じく信州高原和牛のモモブロックも選択肢だ。こちらも赤身が主体で、同じ調理法で応えてくれる。二つの品を比べることで、飼育環境や飼料の違いが微かに肉の風味に表れることに気づく。そうした違いを愉しむのも、ふるさと納税の返礼品を選ぶ醍醐味だ。

そばの実と、季節の手当て
もう一つ、この村を代表する返礼品として信州根羽村産のそばの実がある。400グラム、200グラム×2袋で届く無添加のむき実だ。
そばの実は、粉にする前の状態で手に入ることは珍しい。この形で届くと、台所での使い方が広がる。そば粉に挽くのはもちろん、そのまま塩ゆでして冷やし、サラダに混ぜたり、スープの具にしたりできる。夏場、冷たいそばつゆに浸したそばの実は、歯応えがあり、穀物としての素朴な甘みが引き立つ。
保存も容易だ。乾いた状態で届くので、冷暗所に置けば季節を問わず使える。秋から冬にかけて、温かいそば粉のお汁粉に混ぜたり、春先に新しい野菜と合わせたりと、季節ごとに台所の手当てが変わる。山村で育つそばは、土地の水と気候を吸収した穀物だ。その実を手に入れることは、根羽村の四季を食卓に迎え入れることでもある。
返礼品を選ぶ視点
この村の返礼品を選ぶなら、和牛とそばの実の二本柱で考えるのが自然だ。和牛は特別な日の食卓に、そばの実は日常の手当てに。どちらも、山と水に支えられた村の産業を体現している。
根羽こだわり和牛のコロッケも、手軽な選択肢だ。冷凍で届き、揚げるだけで食べられる。子どもの弁当や、急いでいる朝の一品に重宝する。ただし、この村の本質を知りたいなら、やはりブロック肉で、自分の手で調理する経験を選ぶことをすすめたい。
根羽村への寄付は、山深い村の営みを、自分の食卓に招く行為だ。返礼品を通じて、矢作川が流れ、牧草が揺れ、そばが育つ季節の移ろいを感じることができる。
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