古代から海産物の献上地だった、いすみの海
私がいすみ市を見るとき、まず思い浮かぶのは海だ。千葉県南東部、太東岬から南に延びる磯海岸。その沖合には器械根と呼ばれる日本最大級の岩礁群がある。親潮と黒潮がぶつかるこの海域は、古代から朝廷に海産物を献上する重要な漁場だった。『日本書紀』に記された伊甚国の国造が献上した真珠は、アワビから生まれたものと考えられている。1300年以上前から、この海はいすみの生業の中心だったのだ。
江戸時代中期になると、沿岸地域では地引網漁が盛んになり、大原から岬周辺の寺社には多くの大漁絵馬が奉納されるようになった。五穀豊穣・大漁�祈願の祭礼も行われ、大原はだか祭や中根六社祭といった祭りは今も市民の暮らしに根ざしている。その後、明治から昭和初期にかけて、房総鉄道の整備により東京方面からの人々が訪れるようになり、別荘地としても栄えた。だが、いすみの本質は変わらない。海が、この町の経済と文化の源だ。
日本一の伊勢海老、そして銀鮭
現在、いすみ市の漁業を代表するのは伊勢海老だ。外房イセエビとして、プライドフィシュ・千葉県水産ブランド・いすみブランドに認定されている。器械根の水深20メートル程度の浅さと、岩礁に生息する多様な魚介類。この環境が、日本一の伊勢海老漁獲量を支えている。

ふるさと納税の返礼品として届くのは、この海の恵みだ。ボイル本ズワイガニ肩は、冬の鍋に欠かせない一品。解凍して食卓に出せば、磯の香りが部屋に満ちる。一方、銀鮭の切り落としや銀鮭のカマは、日々の食卓を支える。朝食の焼き鮭、夜の一杯の肴。訳ありとはいえ、味わいに変わりはない。むしろ、端材やカマといった部位だからこそ、骨の周りの身の甘さが引き立つ。


海の恵みを、家の食卓へ
いすみ市に寄付すると、この町の漁場から直結した返礼品が家に届く。それは観光地の土産ではなく、漁師たちが毎日向き合う海の産物だ。古代から朝廷に献上された海産物の系譜は、今、ふるさと納税を通じて全国の食卓に届いている。
銀鮭の切り身は、焼いても煮ても、塩漬けのまま白いご飯に乗せても良い。カマは、塩焼きにして骨の周りの身をほじり出す喜びがある。ズワイガニは、鍋の季節に家族で囲む。いずれも、いすみの海が育てた品であり、その町の生業が今も続いていることを、食べるたびに思い出させてくれる。
