海を埋めた町、海を忘れない
浦安に入ると、まず目に入るのは水平線だ。旧江戸川を挟んで東京都と接し、市域の四分の三は1960年代以降の埋立地。かつてここは三番瀬と呼ばれる遠浅の海が3キロメートルほど沖まで続いていた。漁師たちの生業の場だった。
1958年の黒い水事件は、その海を汚した。工場排水が漁場を奪い、やがて埋立による地域再生論が本格化する。1964年に海面埋立事業が始まり、1971年には漁業権が完全に放棄された。失われたのは海だけではなく、その海とともに生きた人々の営みだった。
今、浦安の返礼品に焼き貝がある。それは単なる食べ物ではなく、埋め立てられる前の浦安が何であったかを思い出させる品だ。
焼き貝に映る、かつての浦安
焼蛤・焼あさり詰合せは、浦安の海の記憶を形にしたものだ。蛤と浅利。どちらも、かつてこの遠浅の海で採れた貝である。焼かれた貝の香りは、塩辛く、磯の香りを運ぶ。殻を割ると、身は柔らかく、海の塩気が舌に残る。

晩酌の時間に、冷えた酒とともに。あるいは、ご飯の上に乗せて。貝の旨味は、シンプルな食べ方ほど引き立つ。焼かれることで、貝本来の甘みが凝縮される。届いた折詰を開けば、かつての浦安の漁師たちが毎日のように採っていた貝が、そこにある。
埋立地となった今、浦安の海産物は限定的だ。だからこそ、この焼き貝は貴重だ。町の歴史を食べることになる。
旅と、町の二つの顔
浦安を訪れる人の多くは、舞浜の東京ディズニーリゾートを目指す。1983年の開業以来、この町は観光都市へと変貌した。市内には多くのリゾートホテルが立地し、国際会議観光都市にも認定されている。
そうした旅の拠点として、JTBふるさと旅行クーポンやホテルオークラ東京ベイのギフト券も返礼品として用意されている。東京都心へのアクセスの良さ(東京駅まで最短約13分)を活かし、浦安を拠点に都内を巡る旅も、浦安そのものでの滞在も可能だ。

しかし、浦安の本質は、埋立地の上に築かれた新しい町と、その下に眠る海の歴史の二重性にある。焼き貝を食べるとき、その二つの顔が同時に立ち現れる。
